フォアグラ

 フランス料理における「世界三大珍味」なるものをご存知でしょうか?
 フォアグラ・キャビア・トリュフの三食材を指して言うことが多いようですが、 本国フランスでは特に「三大〜」としている訳ではありません。 この「三大〜」 特に日本人が好んで使う言いまわしのようで、中国料理、 日本料理とフランス料理の 三つで「世界三大料理」とか、 「三大スープ」「三大ワイン産地」 「サンダース軍曹」、、、 あ、これは関係無いですね。
  で、その世界というかフランス料理界における「三大珍味」のうちのひとつフォアグラが今回のテーマです。 この三大珍味のうち他の二つは自然界から採ってくるものなのですが、 唯一人の手で造られているのが、この「フォア・グラ」なのです。  「フォア・グラ」には大きく分けて2つの種類があり、ガチョウの肝臓を 肥大させて造る、「フォア・グラ・ド・オワ」と鴨の肝臓を肥大させた 「フォア・グラ・ド・キャナ−ル」の二つがあります。 鴨のフォアグラとガチョウの フォアグラを比較してみると、鴨の方がやや小さく、風味と油脂分が強いとされているの ですが、レストランで主に使用されているのは生産量の多いガチョウの方です。  フォアグラは肝臓が肥大したものなのですが、肥大させる為にガバージュ(強制肥育) という方法が取られます。ガチョウにトウモロコシなどエネルギー価の高い餌を無理 矢理 食べさせて、お腹が地面に着く位太らせるのです。と、いうことはいわゆる 「脂肪肝!?」、 自らのお腹をそっと押さえて同情の念を抱かれる方もいらっしゃる かも知れませんが、 鴨やガチョウの場合はやや事情が違いまして、 そもそも本来渡り鳥であった鴨やガチョウは 体にエネルギーを 蓄えやすい体質なのです。
 この、フォアグラの歴史は実は非常に古く、古代エジプト王朝においても、 当時から残る壁画に フォアグラを食していたらしい様子が残っています。 また、ローマ帝国時代においては、フォアグラ を造るため、 鴨にイチジクを食べさせていたそうです。イチジクそのものを、 古代ローマでは 「フィカトゥム」と呼び、 いつしかその語が変化してフォアグラの「フォア」になったとか、、、 古代エジプトの王様も食されたというフォアグラ、 現代のレストランにおいては様々な調理法が用い られ、 温かいソテーとなり、また冷たい冷製のテリ−ヌとしても供されます。
 もちろん当店にも常にご用意がございます。どうぞその贅沢な風味をご堪能ください。
キャビア

 日本では鮭の卵を「イクラ」と呼びます。ところが「イクラ」とはそもそも古 いロシア語で、魚の卵を指して言う言葉でした。鮭の卵を赤いイクラ、チョウザ メの卵を黒いイクラと呼んでいました。この「黒いイクラ」こそ、現代では 「キャビア」と呼ばれる高級食材。チョウザメという魚の卵がキャビアです。 フォアグラ、トリュフと並んで「世界三大珍味」のうちのひとつなのです。

 「ブリ」「スズキ」など成長によってその名称を変える出世魚がいます。では、 一番エライ魚はなんでしょうか?実は「チョウザメ」です。チョウザメは、西洋 では古代ローマ時代より『ロイヤルフィッシュ』、中国では『煌魚(エンペラー フィッシュ)』と呼ばれ、時の王や皇帝が自らに献上させたという歴史を持って います。

 チョウザメの名の由来は、漢字で書くと、「蝶鮫」。どの辺が「蝶」かと言う と、その鱗の形が蝶形をしている所からで、鮫とありますが、鮫の仲間でもな く、また、鯉や鮒等ともかなり違った種類の淡水魚です。  さて、このチョウザメ、その肉が王たちに重宝されたのはその肉が性欲増進の 媚薬とされた経緯があり、味わいは淡泊で、鮫のようなアンモニア臭は無く、ま た、淡水魚でありながら泥臭みが無い非常に上品な味わいであるとか。現在その 数は希少であり滅多に口に入る事はありませんが、なんと近年、日本国内におい てチョウザメの養殖に成功。いずれ食卓に登場するかもしれません。  チョウザメというのは野性の物、蜂や蟻の様に女王が存在する社会を形成し、産 卵の際には何十頭もの雄が女王鮫を追い掛けて河を遡る風景が見られます。もち ろん、一番先頭を泳いでいる女王鮫を捕らえてそのお腹から“卵=キャビア”を 取り出すわけですが、一生懸命追いかけてきた女王鮫を奪われてしまった雄たち の気持ちはいかなるものか、、、

 キャビアの世界2大産地といえばイランのカスピ海と、ロシアと中国の国境と なっている黒龍江(アムール河)です。チョウザメには30種ほどの種類があるそ うですが、キャビアが採られるのは主に3種類。一番高級なのが「ベルーガ種」 その他に「セブルーガ種」と、「オシェトラ種」があります。必ずしも一致する とは限りませんが、高級食料品店などで見かけられるものに、青、黄色、赤色の 3種に分けられた缶詰めを見つけられたことがあるかもしれません。 ベルーガ・キャビアは、明灰色から暗灰色を帯びており、表皮がきめこまかく、 大粒であるのが特色で、非常に珍重されている高級品で、明るい色のものほど高 い値がつきます。オシェトラ・キャビアは、褐色を帯びた灰色から金色のものま であり、格別の逸品で、ユニークなナッツの風味をもつといわれるキャビア。レ ストランで見かけるものはこの種類のものが多いかも知れません。インペリア ル・キャビアとは、高齢のチョウザメから採れる大粒琥珀色のオシェトラ・キャビ アで、その昔はイランの皇帝専用であったためこの名前が付きました。セブルー ガ・キャビアは、暗灰色をしており、小粒ですが、独特の風味があるため、こち らもたいへん人気があります。

 さて、このキャビア、オードブルのサラダなどにアクセントとして添えられるこ ともありますし、魚介料理のソースの中に加えたり…ブリニと呼ばれるそば粉の 入ったパンケーキに載せて、一緒によく冷えたシャンパンなど合わせて、、、と ても贅沢な取り合わせの一品となるのです。

もちろん当店にも常にご用意がございます。どうぞその贅沢な風味をご堪能ください。
チーズ

世界三大珍味」その3種目は、「トリュフ」なのですが… 「トリュフ」といえば、冬の味覚、もちろんサマートリュフ等、 夏にご用意出来る種類もあるのですが、その点はまとめて秋の候にお話したいと思います。


と、いうわけで今回は独断と偏見でチーズの話。
 フランス料理店のコースにおいてはメインディッシュの後に供されるこのチーズ、 いかんせん馴染みの無いその香りが苦手だと思われる方も多いのではないでしょうか? 「チーズって腐ってるんとちゃうの?」というお声も時々聞くのですが、チーズは腐敗しているのでは無くて、 発酵しているのです。では「腐敗」と「発酵」の違いはと言うと、、、実は人間が食べられるものを「発酵」 食べられないものを「腐敗」と呼び、微生物が及ぼす作用はほぼ同じなのです。

 ところで、18世紀の美食家ブリア=サヴァランはその著書の中で、「チーズの無い食事は片目の無い美人のようなものだ」と、 例えました。チーズはことフランスにおいては各村にひとつづつ名産のチーズがあり、その数はゆうに500種は越えています。 チーズCheeseは英語ですが、フランス語ではフロマ−ジュFromageと呼びます。 Fromeフルムとは、固める、固めたものという意味で、牛や山羊などの乳を固めたものが、 フロマ−ジュ。テリ−ヌやゼリー寄せの料理にも「〜のフロマ−ジュ仕立て」という名前を付けることもあります。
 チーズの歴史はかなり古く、古代エジプトの民が仔牛の胃袋で作った水筒に山羊のミルクを入れて旅をしていたところ、 ある日そのミルクを飲もうとすると水筒の中で固まっている。おそるおそる食べてみると意外にも美味しかったとか。 これがチーズのはじまりと言われています。 一方、奈良時代には日本にもチーズはバターと共に大陸から入ってきています。 バターを当時の言葉で「酪(らく)」チーズは「蘇(そ)」と呼ばれていました。 この「蘇」を十分に熟成させたものが「醍醐(だいご)」です。すなわち現代でも使われている 「醍醐味」とは、熟成したチーズの味の事だったのです。

 ナチュラルチーズはその製法などから、大まかに7種類程に分類されています。 カマンベールチーズに代表される表面に 白いカビの生えた「白カビチーズ」。ロックフォールで有名ですが、青カビが中に入った「ブルーチーズ」。 昔、といっても30年程前までの日本のデパートなどでは、「青カビ」と言うと売れないので、フランスで呼ばれている 「pate persiler」を直訳して、「パセリ入りチーズ」などと称して販売していたと言うこともあったそうです。 また、ヨーグルトとチーズの中間的な味わいで、比較的お召し上がりやすい「フレッシュタイプ」。 コンテ、グリュイエールなどの「ハードタイプ」ハードとやや製法の違う、軟らかめの「セミハード」。 この2つのカテゴリーは日本のプロセスチーズにも似ています。そのミルクの風味の違いから「シェ−ブル」と 呼ばれる山羊乳のチーズ、そしてお酒や塩水で表面を洗う「ウォッシュタイプ」。 この「ウォッシュ」チーズはそれぞれに個性的な強めの香りが特徴的です。

チーズは日本でいう「お漬物』みたいなもの。そういえば懐石料理などでも、 最期にごはんとお漬物が出てきますよね。もう少し食べたいな、とか、お酒が少々残っている時などに一緒に食べたり、、、 胃の活性化にも有益だそうです。地方性が豊かなところも共通点があります、納豆のようにモノによっては香りの強い タイプもあったりと。日本では野菜を保存するのにお漬物にしました。西洋ではミルクを保存しておくために、チーズを完成させたのです。
 さて、チーズをいざ買い求めようと思ったとしても、ネックとなるのが、食料品店では200g位からと単位が 大きくなりがちな点ではないでしょうか。どうしても食べきれないとの声も。そこで、レストランであれば、 (もちろんジャンティ・オジェも含めてですが)様々なタイプのチーズを常々7〜10種程を取り扱ってますので、 熟成の上手く進んだチーズをいろいろとお楽しみ頂けると思います。それこそ、レストランならではの「醍醐味」ではないでしょうか?
ウナギ

 毎日暑い日が続いています。夏の暑さに体力も衰えがちで北野坂を登る足取りも重くなりがちな今日この頃、、、

 暦の上で7月末、大暑が近づくと夏バテ防止、精を養うとの事で、土用の丑の日はウナギを食べますね。 実はこれは古く江戸時代のお魚屋さんがキャンペーンとして広めたモノだったのです。 今でも一部のカレンダーには 「きのえ、きのと、みずのえ、…」などの文字を見かけることがありますが、 これは五行十干と言われる風水みたいなもののひとつです。 「土用」とは「土を用いる」の意で、 大暑が近づき「火の気」が強くなるために「土の気」、泥の中を好むウナギを食して「火の気」に負けないようにとの事 から 始りました。

 ウナギは食材としては結構ポピュラーなものであり、世界各地で食べる習慣があります。 フランスにおいてはワインで有名なボルドー地方、地方の中心をジロンド河という大きな河が流れているのですが、 ここで採られたヨーロッパウナギとボルドー産の赤ワインを用いて作られる地方料理が「ウナギの赤ワイン煮」です。

 このウナギ、鮭と同じく河と海とを回遊します。ところが成長は鮭と全く正反対で、河川で成長し、 産卵するために河を 下り海で生まれます。インドネシア近海の深い海の底で卵からかえり、 レセプトファルスという柳の葉のような幼魚の形態で プランクトン等を食べて成長するといわれていますが、 現在のところ日本のウナギが太平洋のどこで生まれ、 どのように育っているのかは、はっきりとは解明されていません。 後に日本の河へ遡る途中で海上に上がり、 日本の河川を目指します。このときに捕えられるものが「シラスウナギ」です。 また、ウナギの表面はヌルヌルとした粘膜で覆われていますが、塩水と真水という水質の違う海と河の両方で 生息するために、 体を保護するよう、ぬめりがあるのです。

 さて、「土用の丑の日」の話から、ウナギの旬は7月下旬と思われがちですが、天然のウナギは秋に河を下って 海に 向かいます。産卵の為に脂肪を蓄えるのは実際には8月の半ばから9月の上旬といわれ、 一番脂が乗ってくるのは実はこの時期と言えるでしょう。

 脂の乗ったウナギ、当店ではオードブルなどに仕上げて召し上がって頂いております。 実際、ビタミンBも多く含まれ夏バテ防止にも効くと言われています。さてさて、ホントかマユツバか、 「長いもの」には巻かれてみてもいいかも知れません。
ジャガイモ

9月に入って秋の訪れも感じさせる様になりました。思えば今年の夏はとても暑かったですね。 また、テレビでは連日オリンピックの話題が賑やかに…今年はギリシャでオリンピックがアッテネ…

 さてさて、今月はフランス料理に限らず、日常でも非常に親しみのある食材である「ジャガイモ」を取り上げた みたいと思います。  このジャガイモ、お肉と一緒に「肉じゃが」、ファストフードでは「フレンチフライ」も親しみがあります。 フランス料理ではグラタンに仕上げられて「ポンム・ドフィノワ」。 当ジャンティオジェのお肉料理などにもたびたび付け合わせとして登場します。

 日本で呼ばれるジャガイモの語源は実は東南アジアのジャカルタから。 「ジャカルタのいも」が訛ってジャカルタいも…じゃがたらいも…じゃがいもとなったとか。  フランスでは「Pomme de terre ポンム・ド・テール」と呼びますポンムはリンゴ、テールは土と言う意味 ですから、直訳すると「大地のリンゴ」、リンゴは旧約聖書にもアダムとイブが最初に口にした事から、 禁断の実でもあり、また、非常に高貴な果物でもあります。 何故あの形のごつごつしたジャガイモが高貴な野菜であるのか、 それは最初に普及したいきさつに秘密があります。

 さて、コロンブスがアメリカ大陸を発見してから月日は流れ、ヨーロッパに続々と新世界の食物が入ってきます。 トウモロコシ、タバコ、トマト、、、そしてジャガイモです。  ジャガイモがフランスへ入ったのは、他のヨーロッパ諸国に比べて幾分遅く、主として貴族の間だけで珍重され、 宴会での珍しい食べ物として試食された程度でした。 17世紀初めのルイ13世時代でも、一般大衆の口には入らず、貴族階級の余興の対象にとどまっていたようです。  しかも、ジャガイモはその芽に有毒な物質ソラニンが発芽の際に含まれたこと、また、ジャガイモは其の一部分を 切り取って植えるとそのまま増えます。この事は当時のキリスト教のモラルに反したこともあって、貴族たちの間 では専ら其の白い花が観賞用に用いられていました。

 そんな中、1769年と1771年にヨーロッパは大凶作に見舞われたのです。フランス国内においても、 切実な飢饉に見舞われました。対策を講じていたフランス・アカデミーは、飢饉の際小麦に代わることのできる食物を 賞金つきで募集することになり、セーヌ県の薬剤師オーギュスト=パルマンティエの提案を採用しました。この新世界の デンプン質も多くエネルギー価の高い野菜です。
 飢えたパリ市民たちになんとか普及させようと試みましたが、そこはパリジャン、パリジェンヌ、腹がすていても形の 悪い奇妙な野菜を簡単には受け入れません。この心意気にも現代の美食の都と言われるパリの原点が垣間見られます。  そこでフランス政府は一計を案じました。ジャガイモをパリ郊外の宮殿の庭に植え、兵士に見張らせたのです。 見張りは夜も続けられました、が、深夜何時間かだけ見張りが付かない時間をわざと設けたのです。
 何が植えられているのかと興味津々だったパリジャンは、大いに好奇心を駆り立てられました。 見張りのいなくなった夜陰にすきを窺って掘り出す者がでてきたのです。  深夜のイモ泥棒を、見て見ぬふりをするよう指導したのは、パルマンティエでありましたが、 この策略が効を奏し、ジャガイモの普及に拍車がかかったのです。
 この薬剤師パルマンティエの功績を称えて、現代のフランス料理においても、ジャガイモを使った料理には、 「ジャガイモ添え」の意味で、彼の名が使われています。「〜のパルマンティエ風」と名の付く料理にはジャガイモが 付け合わせで添えられます。たとえば、マッシ・パルマンティエ、パルマンティエ風オムレツ、また、 「ポタージュ・パルマンティエ」とはジャガイモのスープのことです。
(蛇足ながら冷製のジャガイモのスープ「ヴィシソワーズ」は出自がはっきりしていて、 1917年ニューヨークのホテルリッツの料理長、ルイ=ディヤが最初に作ったアメリカ生まれだそうです。)

 いかがですか?身近な食材にも様々なエピソードがあります。そんなお話で食の楽しみが増えるかもしれません。 ついついレストランに足が向いてしまう…かもしれませんね。
キノコ

秋になると様々な食材が登場します。フランス料理がいろいろなバリエーショ ンを発揮できる季節でもありますね。食材をひとつ取り上げるとしたら、”キノコ”です。 キノコが最も豊富に出回る季節となりました。

 キノコは近年の研究では成人病の予防作用や抗ガン作用があるといわれたり、 低カロリーのダイエット食品として取り上げられ、近年の健康志向を背景に5年 ほど前から随分と消費が伸びています。そういえば他の野菜に比べて、テレビコ マーシャルされていたりするのもうなずけます。  このキノコとは、もとより木の回りに生えることから「木の子」と名付けられ たというごく単純な由来で、その実態はカビや酵母と同じ仲間で菌類に属しま す。本体は菌糸と呼ばれる細長い細胞で、植物でいうと根や茎にあたり、樹木や 枯れ葉に伸びて栄養を吸収しています。充分に栄養を採って密度が高くなると菌 糸の一部が変化して眼に見える実体となるのです。この眼に見える形を形成する 「菌」をキノコと呼び分類学上では実はたくさんの種類があるのです。

 いろいろな種類のキノコがあるのですが、もちろんフランス料理においても頻 繁に使用されます。フランスで、キノコの産地として有名なのが中央山地オー ヴェルニュ地方、豊かな森で生まれたキノコが日本にも輸入されています。当店 でも何種類ものキノコがミックスされてソテーされた付け合わせもあり、(特に 肉料理に使用することが多いのですが)ヒラタケやマイタケの他、見慣れないキ ノコも多いかもしれません。

 いくつかご紹介します。黄色や橙色のラッパ状の形をしてあんずの香りがするといわれる「ジロル」フ ランスではシャントレルとも呼ばれています。ぷっくりと丸い形状をして淡い褐 色の「セップ」はイタリア料理店でポルチーニと呼ばれています。この名の方がポピュラーかも知れません。 日本名でフクロアミガサタケという名前を持つ「モリーユ」は細 長い柄の頭部に網目状の細長い傘が付いています。「ムースロン」というキノコ はマッシュルームに似た丸い形状のキノコですが、フランスでキノコ狩りという と一番親しみのあるキノコです。丸い円を描いて発生するので、これをフェア リーリング、すなわち妖精の輪と呼んでいます。「トロンペット・ド・モール」 は直訳すると「死のラッパ」その真っ黒な色合いと、形状からその名が付いてい ますが、前述のジロルと非常に近い種類です。また、「ピエ・ド・ムトン」はピ エ=脚先、ムトン=仔羊の意で、ずんぐりとした姿が仔羊のつま先に似ていると ころから。色は黄金色に近く、傘は周囲が波うっています。

 この他にも日本のヒラタケ、マイタケなども人気が高いです。もちろん松茸も 日本の秋の代表的なキノコです。この松茸、養殖には未だ成功していないのです が、北欧に古くから生息するキノコが実は全く同じ品種であることが確認されま した。現代の菌糸学の発達で確認できたそうです。ところが、同じ生物であるの ならば分類学上、学名を統一しなければなりません。学名とは分類学においてラ テン語による付けられるもので、ヒトをホモ・サピエンスと呼ぶ、という事とい えばわかりやすいでしょうか。実はこの北欧のマツタケ、分類学上の名前が日本 語に直訳すると「靴下キノコ」だったのです。日本人にとってよい香りだったも のが、北欧の人々にとっては靴下の臭いだったのですね、、、日本の学者はなん とか名前を変更してくれるように申し込んだということですが、事の顛末がどう なったのかは今のところ分りません。

 さて、様々なキノコをご紹介いたしましたが、残念ながら文章ではその味わい までをお伝えすることはできません。どうぞジャンティオジェで味においても たっぷりと秋を感じて頂けたらと思います。

 どうぞ、沢山の秋の味覚をご用意して、皆様のお越しをお待ちしております。
トリュフ

フランス料理における「世界三大珍味」とはフォア・グラ、キャビア、トリュフ でした。このうちフォア・グラ、キャビアについては春先にこちらのコラムで紹 介いたしました。トリュフは秋に なったら紹介しますといいながら、、、忘れていたわけではありません。今年は 秋になっても随分暖かったものですから、、、と、いう訳で今回はいよいよト リュフのお話。

 レストランで見かけるトリュフと同じ属にあるのは世界中で約40種類。しかし食 用とされるのは数種で、フランス各地の山間部で採取される「黒トリュフ」、  イタリア産が有名な「白トリュフ」 フランスとスイスとの国境あたりでごくわ ずかに得られる「紫トリュフ」などが挙げられます。過去においては、中でもフ ランス南西部のペリゴール地方産黒トリュフが最高と言われてきましたが、ペリ ゴール地域においては1980年代後半より産出量が激減してしまい、現在では周辺 地域のカオール、ブリーヴ、ヴォークリューズなどが主産地となっています。

 トリュフは地中に発生することもあり、近年までその生態が解明されていませ んでした。ある言い伝えでは柏や松の木から落下するホコリが地中で固まったも のとか、また、ハエが卵を産みつけるために木の根に付けたキズから樹液が出 て、それが固形化したものなどとも言われてきました。
 トリュフが人々を魅了するのはその独特の香りに他なりません。こと18世紀の フランスにおいては、当時の貴族たちに媚薬、つまり惚れ薬として効能が信じら れ、重んじられました。当時信じられていた錬金術の発達と共にその効能があれ これと研究されました。いつの世も人は恋には熱心なのです。

 近代になってトリュフが子嚢菌類(しのうきんるい)と呼ばれるキノコの一種 であることが解明されました。同じ子嚢菌種にはモリーユ(日本名ではフクロア ミガサタケ、フランス料理店でよく使われます)があるのですが、トリュフに 至ってはその栽培に成功してはいません。
 トリュフは地中に発生するので発見するのは容易なことではありません。そこで 嗅覚の優れた雌豚を使って探させるという方法が取られてきました。豚は嗅覚が 優れていて犬の数倍あると言われています。私共のレストランでトリュフをお出 しすると、結構な人数のお客様がこのことをご存知です。
 しかし豚の場合、勢いが余ってせっかく見つけたトリュフを食べられてしまうと いうことがままありました。トリュフを見つけた途端、どんぐりを投げて豚の気 を逸らしたり、また、持っていた杖を豚の口に挟み込んで食べられてしまわない ようにするなど苦労が絶えません。そこで最近ではもっぱら訓練された犬を使う ことが多い様です。
 トリュフの香りを付けた肉などを地中に埋めて、探し出す訓練をするわけです が、それでもしっかりとモノになるのは200頭に1頭くらい。そのため、このト リュフ犬そのものに高値が付き、1頭900万円から1千数百万円するとか。近年で はトリュフ泥棒よりも犬泥棒の被害が深刻だそうです。

 良質なトリュフとは、香りが素晴らしく、スライスすると中身に現れるメッ シュが緻密で、かつ、白と黒の色合いがはっきりきれいに出ているものといわれ ます。毎年の天候によって、出来不出来は左右されるのですが、その年のトリュ フの出来を予想するのはその年のボジョレー・ヌーボーだそうです。ボジョ レー・ヌーボーは雨量の多い年には糖度が下がります。よって、ボジョレー・ ヌーボーにとっての当たり年は、トリュフにとっては不作の年となるようです。  さて、今年のボジョレー・ヌーボーの解禁日は11月18日、ワイン好きのみなら ず、トリュフの出来が気になるシェフにとっても気がかりな日です。

 今年のトリュフの出来がいかがなものか、是非当店にてお確かめください。17 世紀の貴族たちがこぞって媚薬を追い求めた真偽を確かめに、素敵な女性(男 性?)とご一緒されるのもよいかもしれませんね。
ジビエ

 毎年11月の半ばくらいから冬にかけて、フランス料理店のメニューには 「ジビエ」の文字が登場します。

 さて、このジビエ(gibier)、日本語では”野禽獣”と訳されることが多いようです。  ことジビエが重んじられるのは、猟師が鉄砲で撃った野生の動物であること、 猟が許される冬の一定の期間にしか食べられないことなどが挙げられます。冬に 備えて野山の木の実などを食べて栄養を蓄えた野禽獣の肉は、脂がのっていて硬 く締まってきます。それを弾力のあるジューシーな肉質に熟成させ、レストラン では野趣あふれる料理に作り上げることが出来るのです。

 古代から中世へと変化を遂げた西暦5世紀から9世紀に至るまで、現代のフラ ンスはまだフランク王国と呼ばれていました。もともと狩猟民族であったフラン ク族は戦闘訓練の要素もあった「狩り」を好みました。狩りの一つの形態として 「ハヤブサを使った鷹狩り」があり、当時のフランク族語でgabaitiと呼ばれて いました。後にこの言葉がgibierと変化します。ジビエgibierは本来「狩りをす ること」の意味でした。

 しかし、一方ジビエは中世において庶民の口に入るものではありませんでし た。フランク族の末裔である、フランス王、フランス貴族たちは狩りを行うこと を高貴な義務とし、一般の庶民が狩りを行うことを許さなかったのです。それ は、狩りを行なうための獲物の減少を防ぐ目的もあったのですが、曰く、野生の 動物は自由であり、自由な生き物を捕えることが許されるのは、自由が保障され た身分である貴族だけであるといった考えからです。そのため、当時ジビエは多 くの宮廷料理の中に現れることになるのですが、その後、18世紀の末になるとフ ランスでは革命が起こり、貴族社会は崩壊していったのです。
 しかし、後に現れる様々な「レストラン」において、「高貴な」ジビエの味は 引き継がれました。  ジビエの種類にもよりますが、主な調理法はローストと煮込みです。ジビエは 食べやすいものから香りの強いものまでありますが、主たる国、フランスでは ちょっとユニークな呼び方でジビエを大きく2つに分けています。

 ひとつは「裸のジビエ」 ジビエ・ア・ポワルと呼ばれ、大きな四つ足の獣類 を指し、鹿、イノシシ、野ウサギ、あるいは熊なども含まれます。

 もう一方は「羽のジビエ」 ジビエ・ア・プリュムです。ジビエ・ア・プリュ ムは山や野原に棲む野禽を指します。山シギ,キジ,ヤマウズラ。,水鳥の類いで は、青首鴨,サルセル(おしどりの類),などが挙げられます。

 ジャンティオジェにも、すでに様々なジビエが入荷されてはいるのですが、決 してその量は多くはなく、たいへん希少なものです。なぜなら、ジビエは熟練の 猟師さんがじっと待ち伏せをして捕らえたものしか食肉には適さないからです。 傷を追わせたまま動物が逃げ回れば、肉に血が回って真っ黒になってしまいます し、可食の肉の部分に弾が当たってしまえば肉が台無しになってしまいます。ま た蝦夷鹿などの大きな野禽獣ともなれば、その100キロをこえる巨体を山中から 移動させるのは大変な重労働なのだそうです。

 一年のうちでこの時期にしか味わえないジビエ。今年、ジャンティオジェでは クリスマスメニューにおいても登場させます。ぜひフランス料理の真骨頂を楽し んでみてください。
牡 蠣

 新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

 何かと災厄の多かった昨年が明けて2005年。今年のお正月は満喫されましたでしょうか?お正月休みの間にたっぷり冬の味覚など堪能された方もいらっしゃるかと思います。
 さて、冬の味覚といえば様々な食材が思い浮かびますが、今回は海の幸「牡蠣」について。この牡蛎のシーズンといえばやはり冬の期間、晩秋から初春にかけてといわれます。

 冬がシーズンで旨味が増すのは、寒さを凌ぐために牡蛎自身が体内にグリコーゲンと呼ばれるエネルギーを蓄えて身もふっくらとしてくるからです。西洋では「Rの着く月以外は牡蛎を避けよ」と昔から言われてきたように、牡蛎を食べるのに夏は避けられてきました。これは夏の時期が牡蛎の産卵期にあたり、自身の栄養を産卵に費やしてしまうからです。牡蛎そのものの抵抗力がおちて病気にかかりやすくなっているため、その牡蛎を食して中毒になる恐れがあったのです。

 牡蛎は1時間に10リットル、1日にして200リットル以上もの海水を吸っては吐き、その中に漂っている植物性プランクトンをエラで漉しとってエサにしています。牡蛎はその一生を一旦付着した岩場などから移動すること無く過ごし、アサリやサザエのように自ら運動をしてエネルギーを消費することがありません。このため体内には栄養素がどんどん貯まっていくことになるのです。
 そのため栄養価がきわめて高く、「海のミルク」とも呼ばれているのですが、人間が食物として体内に摂取したときに、凝縮されたエネルギー価の高さから体が消化できないと判断して、拒否反応を起こすことがあります。体が疲労しているときや風邪などの病気を持っている時などに起こりやすいのですが、食あたりの様な症状なので牡蛎の毒素にあたったとされる思われることも多いようです。

 このページをご覧の方の中にも心当たりのある方がいらっしゃるかも知れませんが、生ガキは常に中毒の不安がつきものです。この食あたり、以前は鮮度の問題と考えられていました。しかし最近の研究では鮮度の悪さで発生する菌ではなく、牡蠣があらかじめ体内に持っているウィルスの影響が最も大きいであろうと解明されてきています。詳細は研究中ではあるのですが、同じ牡蛎を食べてもあたる人とあたらない人がいるのはウィルスに対する抗体を持っているか否か、また、肝臓の働き具合や体調次第によるところも大きいそうです。

 牡蛎は世界中の海に生息し、その種類は100以上になるといわれ、ヨーロッパやアメリカでも広く食されています。代表的なもので、細長い形をしたマガキ、イワガキ、丸い形をしたものに、ヨーロッパヒラガキ(フランスガキ)、オリンピアガキなどが挙げられます。あまり知られていないことなのですが、現在フランスにおいて食されている牡蠣のほとんどはそもそも日本原産だったのです。1970年代後半にヨーロッパでは牡蠣の病気が流行り、細長い形をしたマガキはほぼ絶滅してしまいました。そこで海外から稚貝を輸入して再繁殖させることにしたのですが、このとき選ばれたのが広島産の牡蠣。フランスの牡蠣のルーツは日本の広島にあったのです。ただ、なぜかフランスではこの牡蠣、「ポルチュゲーズ(=ポルトガル産)」とい
う名で呼ばれていることも多いです。これもフランス人の気位の高さからでしょうか、、、

 日本ではもちろんこのマガキの養殖が盛んなのですが、例年牡蛎の出来のよしあしは夏の雨量で決まるといわれています。夏に雨が多く降れば、山林の栄養分を含んだ土が河に流され、さらに海に流れ込んで牡蛎を肥えさせるのです。日本では牡蛎を肥えさせる植物性プランクトンを育てる滋養に富んだ河が流れ込んでいる湾が多くあります。岩手の三陸海岸、伊勢の的矢湾、広島などなど。このことが世界でも有数の牡蛎の生産量に繋がっていると言えます。

 昨年はいくつもの台風が日本列島を通過しました。もちろん様々な被害もあったのですが、山の栄養素がたくさん海に流れ込んだこともあって、今年の牡蠣は肥えています。
 生牡蠣はもちろんの事、グラタンに仕上げた熱々の牡蠣などなど。噛み締めると、ジュワっと口の中に広がる海の香り。豊満に育った今年の冬の味覚、ジャンティオジェでどうぞお試しください。
恋するレストラン

 ついこの間2005年がはじまったかと思えばもう2月。冬らしい寒い日もあったかとおもえば、暖かい日が続いたり 気候が変わりやすい毎日ですが、皆様風邪など召されておられませんでしょうか?

 さて、2月14日は「バレンタイン・デー」ちょうどこの日は寒い冬が終わりを告げ、春の訪れが感じられる時期とも重なり、小鳥たちが求愛行動を始める日とも言われています。
 この「バレンタイン」とはもともと人の名前であったことは良く知られています。SaintValentin、キリスト教における聖人の名前です。聖バレンタインは紀元3世紀ごろの人物で当時のローマ帝国内に実在した教会の司祭でした。当時の皇帝は若者が戦争に行きたがらない理由を家族の存在と考え、乱暴なことに若者が結婚することを禁じてしまいました。このとき秘密裏に結婚の儀式を執り行っていたのがイタリアの牧師、バレンタイン司祭。この行為がのちに皇帝に発見され、キリスト教への迫害もあって、投獄された後処刑されてしまいます。このバレンタイン司祭の命日となったのが2月14日。以来この日が、バレンタインの名と共に後世の人々の間に「聖なる愛」を伝える日となったのです。

 さて欧米諸国、主にキリスト教圏においてバレンタイン・デーには恋人同士が思いを伝えるカードの交換を行います。カードに添える決まり文句は「fromyour Valentin=〜あなたのバレンタインより〜」または、「be my Valentin=私のバレンタインになって」とか。日本人からするとちょっと歯が浮きそうですね。チョコレートを贈るのは日本だけの習慣です。チョコレートを贈るのは日本のお菓子会社が1950年代後半にキャンペーンとして東京のデパートにて催したのがはじまりで以降全国に広まっていきました。

 お菓子会社の広告戦略として始められたチョコレートを贈る習慣ですが、実はチョコレートには惚れ薬としての効果があるのです。覚醒効果と、緊張感を高めたり気分を高揚させる働きがあります。 
 覚醒効果などと言うと難しくきこえるかもしれませんが、これはいわゆる「ドキドキ」です。人間の心というのは緊張や運動による心拍数の増加の「ドキドキ」と恋をしたときの「ドキドキ」を区別していないのです。ドキドキする緊張感を感じた時、傍にいる人に好意を覚えてしまう、というようなすりかえを行うことがあります。と、いうことは、映画「タイタニック」で見られるヒロインのように、豪華客船での船旅の緊張感と、ましてやその船が沈んでしまうといったアクシデントが無かったのなら、あれほど激しい恋に落ちることは無かったと言えるかもしれません。こういった様子を心理学では「情動二要因理論」と言うそうです。

 チョコレートは古代アステカ文明の時代よりアステカ王に愛飲されていました。このアステカの王様は毎夜チョコレ−トを飲んでから女性のもとへ通うのが日課だったそうです。「飲んで」とあるのはチョコレートは最初はカカオ豆を挽いた粉を湯に溶かして飲むショコラトルという飲み物で、16世紀にスペイン人のエルナン=コルテスが現在のメキシコを征服した後ヨーロッパに持ちかえりましたが、ヨーロッパにおいても当初は飲み物として普及していったのです。

 フランス料理の歴史において、チョコレートの他にも惚れ薬として用いられた食材はいくつかあります。以前の当コラムでお話しましたトリュフが挙げられますし、香りにおいては香水の原料として用いられるのが麝香鹿の分泌液(フェロモン)が「ムスク」です。「ムスク」に似た香りを有するブドウが「ミュスカ」、英語で「マスカット」です。また、かぐわしい香りのあるメロンがムスクメロン、これが訛って「マスクメロン」ですね。
 また、大航海時代当時、ヨーロッパの貴族たちがこぞって南国よりコショウやカルダモンなどのスパイスやハーブを持ちかえったのも惚れ薬としての効果を期待した目的もあったのだと言われています。薔薇はその花の美しさを愛でるだけで無く、いつまでも若さを保つ妙薬と言われてきました。フランス料理で時々見かけるピンクペッパ−は、ペッパ−の名が付くのですが、コショウとは品種の異なり薔薇の木の種子です、、、などなど。

 料理と一緒にお召し上がりいただくワインも雰囲気を盛り上げてくれます。数あるワインのなかでもシャンパーニュは恋のお酒。きらびやかな泡立ちと、この炭酸ガスが含まれることによって若干酔いがまわるのも早いようです。また、上質なシャンパンは開栓してもずっと泡立ちが続きます。ディナーで栓を抜いたシャンパンを、翌朝まで泡が残っているか、一晩一緒に過ごして試してみましょうか?、、、と、いうのがちょっとしたプレイボーイのくどき文句だったとか。

 雰囲気もやはり大事な要素ですね。高層階から都会の夜景を見下ろしたり、、、ロマンチックです。でも、緑に囲まれた場所というのもおすすめです。近年の研究では自然の木立や植物などは、それ自体が人の気分を心地よくさせるイオンを放出しているらしく、自然とふたりの会話が弾むことでしょう。

 さてさて、ご紹介しました数々のアイテムですがこれだけ揃えばもう完璧です。鬼にカネボウ フォア ビューティフル ヒューマン ライフ。ちょっと緊張しそうな華やいだ空間、窓の外には豊かな緑、媚薬を少しだけ効かせた美味しい料理、心まで酔ってしまいそうな上質なワイン、デザートにはチョコレート、、、うーん?さてそんなレストランってあるのでしょうか?もちろんありますよ。当レストラン、ジャンティオジエです。
桜 鯛

3月の声を聞くと春はもう間近。巷のニュースでは「春一番」とか「卒業式」「木蓮の香り」「桜前線」春の花といえばやはり桜ですね。もうすぐ桜の季節、食材で桜といえば「桜餅!」、、、私は大好きなのですが、フランス料理店ではちょっと。
でも、「桜鯛」ですね。やっぱり。「腐っても鯛」ですから!!

 「桜鯛」とは魚の種類の名前ではなく、真鯛の別名です。
 真鯛は桜の季節、3月から4月にかけて旬を迎えます。さて、よく旬、旬と言いますがどういった場合が旬というのかご存知でしょうか?食材となる生き物が美味しくなる季節?それはそうなのですが、どうしてその「旬」を迎えると美味しくなるのでしょうか?それは1年のサイクルの中で、その生き物が次の世代を産むために体に栄養を蓄える時期と重なることが多いようです。鯛に関していえば、人間の暦でいうところのゴールデンウィーク前位から卵を生み始めますので、その前の春先の時期に沢山餌をとります。そうして身が肥えてきますので、この時期が美味しくなってくる時期なのです。
 春の出産の時期をはさんで、その前の冬はもうすぐ肥えてくるのにという理由で、また夏は出産後なので少々身がやせるともいわれ、旬とは呼ばれないようです。卵を産んでちょうど半年目くらいの秋は産卵から時間がたって、「裏旬」とも呼ばれ、秋に捕えられるものをまた「紅葉鯛」と呼んで重宝する向きもあるようです。

 桜、紅葉の名が冠せられるように、鯛はその鮮やかな紅色が特徴です。これはアスタキサンチンと呼ばれる色素が体表に表れるからです。このアスタキサンチンとは、海老や蟹に含まれる色素で、海老、蟹類を茹でると鮮やかな赤色になりますがこの成分なのです。「海老で鯛を釣る」とは、些細な投資で大きな利を得ることの例えとして使われる諺ですが、なんのなんの、鯛の鮮やかな桜色は海老をたくさん食した証拠でもあります。海老は昨今では値段が高くなって養殖の鯛
などはどうしても餌として使用しにくくなっており、また海の浅いところで養殖するため、日に焼けてちょっと黒味がかってるとか。その色合いからも天然の鯛と養殖の鯛を見分ける目安ともなりそうです。

 さて、神戸の近海ではやはり「明石の真鯛」がなんといっても有名です。日本で最も美味しい鯛が毎日水揚げされています。では、明石の鯛がなぜ美味しいと言われるのか?それは、鳴門の渦潮とも関係があるそうです。瀬戸内海、特に淡路島の周辺は小島が多く海底の地形も複雑で、この地形が複雑な潮の流れを生み、勢い、鯛などの回遊魚は多くの運動量で泳ぐこととなります。人間でもそうなのですが、運動すると疲れます。この疲れるということ、ちょっと専門的に言うと筋肉の中に乳酸が発生するのですが、実はこの乳酸が落ち着くとグリコーゲンという旨味成分の素になるのです。
 
 実は、天然の真鯛など、海から釣り上げられた状態のものは、網が上げられる際に非常に抵抗することによっても体力が落ちています。生き延びようともがくことは体内のエネルギーを急激に消耗してしまうため、魚であっても、疲れている状態というのは、あまり旨味を感じさせません。
 実は港に上げられた魚のうち、旬の鯛などの高級魚は速やかにお魚屋さんで販売される訳では無いのです。魚屋さんなどで丸1日程度、生け簀で飼われることが多いのです。海から引き上げる時に消費された体力を回復させ、また、内臓をきれいにする目的があるのです。(野生味が失われないよう、必要以上に生け簀で飼うことは避けられます。)

 魚を暴れさせないという観点から、絞めるという行為は速やかに、また、魚になるべく苦痛を与えないように行われることが望ましいのです。真鯛であれば頭のすぐ後ろ、背骨が始る部分に深く包丁を入れ、血液が抜けやすいよう尾びれの付け根にも切りこみを加えるのですが、手馴れたお魚屋さんや、漁師さんの手さばきを間近で見る機会が有れば、非常に見事であることに気が付きます。

 この後、飲食の業界で言う「いかってる」状態になります。いったん肉が硬く締まってくることを指して言うのですが、肉の内部ではタンパク質の分解が始ります。熟成と呼ばれる作用で、タンパク質の分解によって生まれる成分が巷でも話題の「アミノ酸」です。アミノ酸は食物に旨味をもたらす呈味成分として知られていますが、アミノ酸とはこういった呈味成分の総称で、鯛にはそのうちの一種類、イノシン酸が多く含まれています。

 もちろん、人間が感じる旨味については、魚の種類によってもそれぞれ変わってきます。しかし、こと真鯛などの旨味はそのイノシン酸が中心になるため、最も旨味を引き出す方法は、水揚げから一日生けすで泳がせ、絞める際は出きるだけ苦痛を与えないように行い、さらに旨み成分、イノシン酸が充分に現れる何時間か後が一番旨みが乗ってくるといえます。
 古くから使い続けられてきた「腐っても鯛」という言葉は腐った鯛ではなくて、時間の経過を経て、充分に旨味の乗った鯛のことを指していたのかもしれませんね。

 鯛はシンプルにポアレにしたり、また、パイで包んで焼いてそのうまみを閉じ込めて。食材の旬をいかに上手くとらえて料理と成すか、料理人の腕の見せドコロでもあります。
「桜」の季節のうちに一度皆様もぜひお足をお運びください。お待ちしております。
春野菜

 すっかりと春めいてきました。春なのに〜♪つい口ずさんでしまう唄で年齢が分かってしまうというもの。しかし、実はこう見えても私、まだまだ25歳!……と、プラス124ヶ月。
 気持ちだけはまだまだ若くてフレッシュなつもりでいるのですが、、若くてフレッシュといえば、青葉が勢いを増す季節になってきました。春野菜も賑やかです。

 ヨーロッパで春を告げる野菜は「アスパラガス」。フランスでは”春の宝石”ベルギーでは”貴婦人”に例えられ、アスパラガス専用の食器や道具があるほど特別扱いの野菜。もともと地中海東部が原産地で、ユリ科の植物です。300種ほどがあるのですが、食用にするのはそのうちの20数種、食用以外は成長すると蔓状の茎に細かい杉のような葉が生えますので観賞用になります。お花屋さんに行けばまず置いてありますし、実はジャンティオジェの庭にも生えています。
主に食用になるものとして、グリーンアスパラガス、ホワイトアスパラガス、日本ではまだポピュラーでは無いですが紫アスパラガス。野生のアスパラガスという意味のアスペルジュ・ソヴァ−ジュなどがあります。
 このうちグリーンアスパラガスとホワイトアスパラガスは品種でいうと同じ種類といえます。アスパラガスが成長していくたびに周りの土を盛り上げて掛けていくと、太陽の光にあたりませんから色白のアスパラガスが出来あがります。
 フレッシュのアスパラガスの美味しさは鮮度が非常に大事です。現在はずいぶんと流通が整備されて、上質のアスパラガスがご提供出来るようになりました。そういえば昔は白アスパラガスといえば缶詰ばかりでフレッシュのホワイトアスパラガスとはちょっと雰囲気が違っていましたですね。ウチのおばあちゃんなんかは独活(うど)のことを英語でアスパラガスと呼ぶのだと思っていましたから。

 たまねぎは兵庫県の名産品です。春に出回るものが「新たまねぎ」で、この時期に出回るものは大変みずみずしいです。日本で生産量の一番多いのがやはり栽培面積の広い北海道なのですが、実は2位が兵庫県。三宮や北野の異人館街でもこの時期になるとあちらこちらでたまねぎを収穫する風景が見られます。…と言うのは作り話で、そのほとんどは淡路島の産であり、明石海峡大橋を渡って届けられています。

 キャベツも春を告げる野菜。フランス料理の一皿には、ブレゼと呼ばれる蒸し煮にして付け合わせに用いられたり、小さなキャベツ、「芽キャベツ」も良く使われます。芽キャベツがどんな風に生えているかご存知の方は少ない様で、キャベツの小さいのが地上からポコポコ生えているのか、というとそうでありません。ひまわりのような太い茎、直径2センチ程の太い茎に鈴なりに小さなキャベツが生えてきて、その様子はつぼみのでっかい菜の花を連想させます。そう、キャベツは菜の花と同じ種類、アブラナ科の野菜です。
 キャベツとレタスは使い方などよく似ていますが、レタスはキク科の植物です。

 レタスは近年に掛けて様々に品種改良されて来ました。「レタス」の名で呼ばれる球形状のもの、サニーレタスのように葉先が縮れたものもレタスの仲間です。ちなみにこのサニーレタス、実は日本の愛知県で30年あまり前に開発された品種で、よく売れるようにとの願いをこめて当時一番売れていた車の名前をその名に付けました。サニーレタスのサニーは、日産サニーのサニーから付けられたのです。カローラが一番売れていたなら、カローラレタスになっていたのかもしれませんね。

 この他にも、菜の花、新じゃが、豆類たけのこなどなど…とかく、付け合せなどの脇役に回りがちな野菜なのですが、フランス、パリのとある三ツ星レストランでは数年前から野菜だけを使ったフルコースメニューでコースを組み立てています。
ジャンティオジェでも十二分に吟味したお野菜をご準備して、皆様のお越しをお待ちしております。
春の訪れのウキウキした気分をお野菜のみずみずしさと共にお楽しみください。
お 肉

この「食材コラム」も、はや一年。そろそろ書けるネタ(食材)も底を尽きそうです。それでも最近はご来店頂いたお客様から
「毎月読んでますよ〜」
の声も頂いたりして、ウレシイやらプレッシャーやら…○○さん!今月も読んで頂いてますか!?
 さて、5月ともなると、気温も上がって来て、夏も間近。ジャンティオジェの窓の外に広がる木々の緑が本当に鮮やかです。
 上着を脱いで、薄着になると気になるのが私のお腹周り…気のせいか、ちょっとお肉が?
お肉、お肉、お肉…

 関西圏で「お肉」と言えばやはり牛肉を指すのでしょうか?。そういえば中華まんのことを指して、関東では「肉まん」と言うのに対して、関西方面では「豚まん」と呼びますね。
「『肉』といえば『牛』やんか。肉まんちゅうても、あれは豚肉やで。豚肉を使ってるから『ぶたマン』や…」なんて。
というのも、関西圏では農耕用に牛を使うことが多く、関東は武家文化で馬を使うのに対して、牛がずいぶん身近な存在であったことが挙げられるようです。

 日本の食肉文化は明治時代以降から始ったように思えます。しかし、日本人も古くは結構動物の肉を食していた模様です。鹿、猪、熊、狐、ムササビ、などなど記録に残るものでざっと60種類あまり。現代で言う「ジビエ」ですね。と、言ってもそれは太古とも呼べるような古い時代のお話。
  西暦674年、当時の天武天皇は仏教の伝来ともに発せられた詔勅により、殺生をしてはいけないとの理由で食肉を禁じました。以降、表立っては日本では食肉の文化は成り立ってなかった、と言われています。が、その後たびたび、食肉禁止令が出されてい所を見ると普段でも全く口にしなかったと言うことでは無かったようです。そういえば、兎を1羽、2羽と数えるのも、この動物は鳥だから、と無理な主張を通した名残のようですし、子供の頃に聞いたおとぎ話でもしょっちゅう狸汁や猪を食すシーンが表れますよね。

 牛肉や、鹿の肉は江戸時代の武士の間でも薬用と称してたびたび口にされていました。有名なところでは、現在の滋賀県、彦根藩が水戸家に献上していた「牛肉の味噌漬け」がありました。黄門様こと、水戸光国公も好物であったとの記録もあります。長年水戸家に贈り続けていたのですが、大老、井伊直弼が僧侶になったのをきっかけに、この風習をやめてしまいました。この事が後の「桜田門外の変」に繋がったとも言われています。誠に食べ物の恨みは恐ろしいものです。
 時代が明治に入ると、西洋の文化だというので、牛肉を販売する店などが増えてきます。かの福沢諭吉も日本が西洋に追いつくため、食生活の違いに着目し、肉食を勧めたと言います。しかし当時、新たに営業をはじめた牛鍋屋においても、お肉を最初に口にした人々のほとんどは度胸試しの色合いも強く、柄の悪い連中が次々と訪れたとか。

 牛にも沢山の品種があります。参考までにフランスでは、オーブラック、リムジーヌ、ピエ・ルージュ、などなど。日本でも主に牛乳を採るために飼育されているのが白黒のぶち模様のある「ホルスタイン」。食肉用になる和牛と呼ばれるのは4種類、黒毛和種、褐毛和種、無角和種、黒毛短角種ですが、国内で流通している9割方は黒毛和種が締めています。
 古来から日本にいた牛の原種は現在でも山口県の見島(みしま)で飼われている「見島牛」と言われています。この牛は通常見かける和牛が500〜600キロあるのに対してふた回り程小さく、300キロあまりしかありません。後に品種改良が進み和牛どおしの選別、ヨーロッパ種との交配を経て現在の和牛になりました。
 この「和牛」において各地で独自の生産方法を確立したのがいわゆるブランド牛、産地銘柄牛と呼ばれています。つまり、神戸牛、松坂牛、近江牛などです。私どもの所在のある神戸と言えば、やはり「神戸牛」。そもそも外国に開かれた港のあった神戸では、外国人の居住者も多く、もともと食肉の需要は多かったことから、日本でもいち早く食肉文化が定着しました。初代内閣総理大臣、伊藤博文が兵庫県知事であった頃、伊藤が好んだこともあって神戸牛の発展が盛んになったいきさつがあります。
 神戸牛は血統の優れた黒毛和牛で、かつ兵庫県但馬近辺にて飼育されている「但馬牛」を親牛とするものです。この「但馬牛」は非常に品質がよくて、全国から買い付けがあったため、現在日本各地の多くのブランド牛のルーツとなっています。実は、「但馬牛」は牛そのものの名称で、お肉になると「神戸牛」と名前を変えるのです。

 フランスにおいて、もちろん牛肉は多様な料理となります。シンプルなステーキはもちろんの事、ブルゴーニュ地方の赤ワインで煮込んだ「ブッフ・ブルギニィヨン(牛肉の赤ワイン煮こみ)」だとか、韓国料理のユッケのような「ステック・タルタル」、牛肉の薄切りを軽くオリーブオイルでマリネしてカルパッチョに。
 当ジャンティオジェで私個人のオススメはランチで供しております、ロース肉のグリエ。塊のロース肉を焼き上げて、いちばん真中の部分だけをカットしたものをお召し上がり頂いております。贅沢な使い方はもちろんの事、肉汁をたっぷり蓄えてジュ−シーさに溢れています。

 さてさて、今回は「お肉」についてお話させていただきました。牛肉を中心に日本における歴史でしたが、フランス料理においては様々なお肉も用います。仔羊、鴨、仔鳩…それぞれの美味しさがありますが、これらのお話はまた次回に。
 どうぞまずはご自身の舌でいろいろとお試ししてみて下さいませ。
羊 肉

今年ももう6月。そろそろ梅雨のうっとおしい季節になってくるのでしょうか。
 今年の春に入社したわがレストランの新入社員クンも、もう2ヶ月が経ちます。レストランで供される食材にも眼にするものが新鮮なのか、いろいろと興味があるようです。

「すいません、先輩。フランス料理でよく仔羊は聞くんですけれど、この『やまひつじ』っていうのも、良く食べるんでしょうか?」
「は?、やまひつじ?やまひつじ、ヤマヒツジ、山羊…それは、『やまひつじ』じゃなくて、『ヤギ』ですから!」

 最近、羊肉が注目されているようです。私どものお店のある神戸ではまだあまり聞きませんが、特に東京を中心とする関東では、ジンギスカン料理店が次々とオープンしているとか。

 羊は世界で一番広くに渡って食されています。家畜としての歴史も古く、紀元前8000年とされる古代の土器に、羊らしき動物の描かれたものがありますので、現代からおよそ1万年前には人間に飼われていたことがうかがえます。
 また羊が広く世界に普及したのはシルクロードとも密接な関係があるといわれています。古代からシルクロードは東洋と西洋の掛け橋として人々に利用されていました。また、遊牧民にとっても大陸の広大な土地を羊の遊牧をしながら絹やスパイスなどの様々なものを伝えあったのです。
 宗教上の理由からも、牛肉、豚肉などそれぞれタブーがあるのですが、羊にはありませんし、さまざまな環境にも適用する飼育のしやすさと栄養価が高いこともその要因かもしれません。

 日本において羊肉はその臭いが気になるということで長らく敬遠されていたのかもしれません。日本に早くから入ってきた羊肉は、いわゆる毛を採るための「めん羊」(メリノ種)であって肉用羊肉ではなかったからです。「めん羊」でも毛を刈った老羊を食べていたわけですから、正直言ってあまり美味しいものではなかったかも、と思ってしまいます。今や流通は整備され、冷凍などではなく、非常にいい状態の羊肉が海外から入ってくるようになりました。また、国内、北海道などにおいても肉用品種の生産も盛んになってきていますし、さらに近年発生したBSEの騒動から、羊に限らず、鴨や鳩などの他の食肉の需要が増えつつあるとの統計も出されています。
 
 最近に至っては羊肉の効能がTV番組で報道され、大きな注目を集め始めました。子羊はローストや煮込みなどの調理法のスタイルから脂肪分が多く、脂っこいように思われがちです。しかし、羊肉には人間の体内では生成する事のできない必須アミノ酸やタンパク質、ビタミB1・B2・D、ミネラルなどが多く含まれており、その中でもアミノ酸の一種である「カルニチン」が食べて痩せるダイエットにも効果的であるとクローズアップされまたのです。

 羊肉はそれぞれ成長の度合いで区別されています。
 成長した羊が「ムトン」(英語;マトン)で、生後2年以上の永久歯の生えそろった成羊です。ジンギスカン用として使用される事が多いのはこちらのほうです。
 フランス料理店でもっぱら使われるのは「アニョー」で、英語でいう「ラム」です。仔羊=アニョ−は生後一年未満の羊で、まだ永久歯が生えていないものを指します。肉質は柔らかく、癖がなく、ローストすると「みずみずしい」という表現がピッタリです。
 アニョ−の中でも、「アニョー・ド・レ」は最も貴重で、また高級とされています。「・ド・レ=de lait」とはフランス語で乳のこと。羊の餌といえば牧草
ですが、未だ母羊の乳だけしか口にしていない「乳飲み仔羊」で、生後3〜4週間の仔羊です。やさしい香りがふくよかで、非常にやわらかい肉質を持っています。

 「エリゼ宮の食卓」という本が刊行されています。フランスの迎賓館でもあるエリゼ宮において、各国の元首といったフランスの国賓に対してどんな料理と、どんなお酒(ワイン)でもてなしたか、外交上のフランスの意図を食の面からとらえた書物です。
 ここに書かれているのですが、現代のフランス共和国にとって最も重要な国賓とは、隣国であり、また歴史的関わりの深いイギリスの国王、現在のエリザベス2世です。エリザベス女王がフランスを訪れ、その夜の晩餐会でメインディッシュとして供されたのが、「ポイヤック乳飲み仔羊のロースト」ポイヤックはワインの産地として有名なボルドーの中にある村の名前なのですが、同時にフランス最高級の仔羊の生産地でもあります。とりもなおさず、仔羊肉はフランスにおいて最も高級な食肉としての位置づけで、その本によると、高級なお肉のランクとは仔羊に続いて、ウズラ、鴨、牛肉の順でした。日本において和牛が、豚肉や鶏肉よりも重宝されるような感じでしょうか。

 仔羊は、背肉の部分を骨付きのままローストされるスタイルがよく見かけられます。この骨はいわゆるアバラ骨で、この骨は肉に旨味を加える要素になるのはもちろん、ローストする際に身が縮むのを抑える効果があります。結果、縮まなかった肉の中にはジュ−シーな肉汁が流れださずにたっぷり含まれることとなるのです。
 
 ぜひぜひ、皆様にもこの美味しさを味わって頂きたいと思っております。どうぞ、スタッフ一同ジャンティオジェで皆様のお越しをお待ちしておりますので、、、
デザート

 今年は梅雨といっても全然雨が降りませんね。空梅雨だけでなく、気温もやけに高くなって先月から私はすでに夏バテ気味です。どうも暑いのは苦手です。このままの調子で7月、8月とどんどん気温が上がっていったら、来年のお正月くらいにはいったい何度になっているのやら、、、

 体が疲れると甘いものが欲しくなってきます。
 そもそも砂糖は歴史上昔から非常に高価な材料でした。糖類は運動エネルギーの素になりますので、体力を回復させるにはもってこいです。料理やお菓子などに身近に使われるようになったのは近代になってからのことで200〜300年前から。それ以前はもっぱら王侯貴族のみの「薬」として用いられたという歴史もありました。

 日本料理においては料理に味を入れるのを「サシスセソ」と表現します。つまり、「サ=砂糖」「シ=塩」「ス=酢」「セ=しょうゆ」「ソ=味噌」の順番で味を加える、に見られるよう、砂糖は味付けにおいて筆頭に来たりしています。

 しかし、フランス料理は特に料理の中では砂糖を直接加えることは稀です。果実そのものを加えて甘味を補ったり、鴨のソースなどにも使われますが、ポルト酒、マデラ酒というような甘口の酒を煮詰めたものをソースのベースとして使用するなどの方法がとられます。

 そのため洋菓子、特にコースとして最後に登場するデザートは和菓子に比べて比較的甘味とコクを強く感じさせることが多いのかもしれません。体が甘味を欲するようになるからです。

 フランス料理の「コース」と呼ばれるもの。最近では何十品もの料理を少しづつ提供されるフランス料理店もあります。しかし、いづれも基本的にはオードヴル、魚料理、肉料理、デザート、食後のお茶と進んで行きます。食事はは軽いものから味の濃いものへ進むと言うのが原則です。サラダ、あるいは魚介類を中心としたものからオードヴルを始めて、メインディッシュと呼ばれるのは、しっかりしたお肉料理であることが多いです。コースと言うひととおりの流れの中で最後におかれるデザートの印象も特に強くなることは否めません。

 コースの構成とはこのように料理一皿々々計算された意図の上で構成されています。そのためついつい普段の食事より沢山の量を食べてしまうことになりがちです。と、いって暴食が不健康なのではありません。薬などを用いずにたくさん胃袋に収まってしまうということ自体が西洋的「医食同源」の考え方なのです。

 さて、コースも終わりに近づくと、デザートが運ばれてきます。
「デザート=Desserts」フランス語読みすると「デセール」ですが、現代では甘美なお菓子の意味として使われています。実はデザートの「デ=Des」は、否定の意味で「〜しない、〜をやめる」「Serts」は「サーヴィスする」の語が訛ったものといわれています。つまり、この事から、「デザート」は本来「片付ける」という事の意味でした。
 そういえば、メインディッシュを下げた後に卓上のパン屑とかお掃除しますよね。実は「デザート」とはメインの食後が終わった後に卓上を片付ける行為の事であって、いつしかその後に出てくる甘いお菓子の事を指すようになったのです。
 デザートは様々なバリエーションで登場します。軟らかいもの、固いもの、コクのあるもの、軽いもの、、、多様な菓子が存在するのもフランス料理ならでわです。
 いくつかお菓子にまつわるエピソードを紹介しましょう、ワゴンデザートをお選び頂く際にもお楽しみが増えるかもしれません。

 ムース…ムースとは本来の意味は「泡」果物のピュ−レ−をそのままゼラチンで固めればいわゆるゼリーになるのですが、固まる前にメレンゲや、泡立てたクリームを合わせて口あたりを軽く仕上げたお菓子です。使用される果物も、チェリー、ラズベリー、マンゴーなどなど。約30年前に料理を軽く仕上げる「ヌ−ベル・キュイジーヌ」が流行り、それと共にかなり普及したそうです。

 タルト…もともとはこの生地を焼く為の「型」のこと薄く丸いビスケット様のケースの中にクリームと果物を詰めて。フレッシュの果物を乗せるだけでなく、一緒に焼くことも多くみられます。

 ミルフィーユ…直訳すると「千の葉っぱ」上下をはさむパイ生地がサクサクと幾重にもの層になることからから付けられた名前です。間にクリームと共に果物が入ります。

 ブラン・マンジェ…ミルクベースの液体をゼラチンで固めたのがババロア。このババロアの一種です。日本語に訳すと「白い食物]シンプルな上、古くから作られているのでしょう。アーモンドやココナッツでベースになるミルクに香りを付けます。

 ショコラ…フランス語でのチョコレートのこと。媚薬効果もあるといわれているチョコレートですが、上質な材料を選ぶ事が味わいの決め手となることも多いのです。

 ショートケーキ…イチゴのショートケーキなどは洋菓子の代表かも知れません。焼いたスポンジにさっと泡立てた生クリームを塗って、カットしたフルーツを添える。短時間で出来る。短い時間で出来るからショート(=短い)ケーキという説があります。

 ソルべ…フランス料理ではシャーベットのことをソルべと呼びます。クリームや牛乳などの乳脂肪分の加えられたものが、グラス。こちらがアイスクリームのことです。ワゴンサービスではアクセント的にお添え出来ることはもちろんのこと、お菓子とお菓子の間を取り持つソースとしての役割もになってくれます

 ジャンティオジェのデザート、ワゴンサービスがご好評いただいております。何種類ものデザートをご覧いただくことも食事におけるひとつの楽しみかもしれません。レストランは五感をフルに活用して時間をお過ごし頂ければと思います。ずらりと並べられたデザートを眼の前にして「食べきれないわ」と感じていただくのもまた贅沢さなのかもしれません。「全種類をちょっとづつ、、、」といったご注文も時々いただくのですがこの「ちょっとづつ」はどのくらいちょっとなのか?私どもも思案のしどころで、ホントにちょっとだったりするとどうも物足りなかったりして、、、

どうぞ心残りのございませんように。十二分にご堪能下さい。

夏まっ盛りです。ジャンティオジェから臨む窓の外の風景は緑に溢れているので、窓の外は強い日差しが木漏れ陽となって、光のカーテンを織り成しています。神戸は様々な場所で風向明媚な環境の街なのですが、三宮から歩いても10分程度の大都市の中にあってなかなかこう言った風景は見られません。

 でも、困ったことに緑が多いということは、涼を求めた蚊なども徘徊しているのです。プーン。あっ、さされてしまいました。カイカイ、かいかい、貝、貝。

 今月は「貝」についてお話しましょうか。貝類は豊富なコラーゲンと多様なアミノ酸、グルタミン酸、イノシン酸、ビタミンB2やタウリンなどの成分が含まれます。特に、タウリンはコレステロールの血中濃度を下げる働きもあるため高血圧などの予防に働くそうです。
 日本は四方を海に囲まれていることもあって、海の幸が様々に溢れています。その中でも、様々な貝は古くから日本人の口に入っています。考古学で、その土地に人間が居住していたことを表すのに、「貝塚」があることが目安にされます。貝塚とは昔の人々が貝を食した後に穴を掘って貝殻を捨てた場所です。
 また、身近なものであることを表して、昔の中国などでも貝はお金の代わりに使われていました。貨、財、貯、など貝の部首がついた漢字がお金に関わる意味を持つことが多く見られるのはそのためです。

 貝類のうちのひとつ、アワビは8月を迎えると美味しくなってきます。古くは804年、伊勢神宮にアワビとサザエが奉納されたとの記録が残っていますし、アワビは「熨斗鮑(のしあわび)」にも使われるように祝い事など重要な産物であったことが伺えます。
 アワビの天敵はタコです。アワビはかなり強力な力で岩に張りついていますのでひっぱって剥がすのは大変です。そこでタコはこのアワビの呼吸用の穴、殻に開いているいくつかの穴にその脚を巻き付けて息が出来ないようにしてしまいます。苦しくなったアワビが岩から離れると、そこに他の脚を滑りこませて身を食べる。
 さらにこのタコの上を行くのが伊勢志摩の海女さん。アワビを抱えたタコを見つけると、バスケットボールのようにタコを殴って気絶させる。あとはタコごとアワビを捕獲するそうです。
 実は、アワビも近種のトコブシも巻貝です。その形状からそうは見えませんので、古い和歌には「磯のアワビの片想い」のと詠まれる句が有名です。鮑は別名で「恋待貝」と言うそうです。人間に勝手に片思いの代名詞扱いされてしまってますが、エスカルゴや、サザエと同じ巻貝なのです。

 一方のサザエ。「サザ」はさざ波と同じで小さいとか細いという意味で、サザエの「エ」はイエのエ。小さい家と言う意味からその名が付けられたそうです。サザエは殻の周囲にトゲトゲがあります。トゲの少ないものや、トゲのないものもいますが、中身はそう変わりません。市場ではトゲの多いほうが高値で取引されるそうです。波の荒い日本海のような所ではトゲが長く、瀬戸内の波の静かなところではトゲが短くなるそうです。ニンニクとパセリを合わせた「エスカルゴ
バター」を加えてつぼ焼きにすると海の香りと相乗した豊かな風味が口の中いっぱいに広がります。

 タイラギ貝はタイラガイとも呼ばれる大型の貝で、ジャンティオジェでもよく使うのですが、いざお客様の前に提供すると、その貝柱の大きさに驚かれます。よく見かける輔立貝柱の2倍ほどもあり、プリプリとした食感が特徴的。もともとの殻の全長は30センチにもなります。古く江戸時代は現在の東京湾が一大産地だったそうです。現代では有明海などが有名な産地なのですが、漁師さんが素もぐりで採りに行かねばならないそうで、なかなか希少な食材のひとつです。

 ハマグリはこちらも日本古来から人々に愛されてきた貝です。神経衰弱のように二枚の貝どうしを合わせる遊び「貝合わせ」に平安時代の貴族は興じました。そのため漢字をあてると「蛤」。ハマグリは生息する水のきれいさに敏感です。海が汚れてくると自ら移動してしまいます。関東地方の沿岸部では潮干狩りが出来るところがぐっと少なくなってきました。
 ハマグリの持ち味は貝の中に蓄えた、ジュースです。ダシやスープに利用するのはこのためで、また、アミノ酸もたっぷり含まれています。この風味を活かせるように、野菜の甘味と一緒に合わせたり、白ワインの風味を効かせたりします。

 この他にも、ホタテガイ、アサリ、ツブガイ、バイガイ、マテガイ、アゲマキガイ、、、様々な種類の貝をジャンティオジェでは用います。お魚料理と取り合わせたり、海の幸サラダの中のひとつとして。やはり脇役としての扱いも多いのですが、欠くことのできない名脇役です。

 フランス料理といえば冬に美味しいイメージが強いのですが、夏には夏の食材が脇を固めております。どうぞ華やかな一皿を楽しみに足をお運びください。
豚 肉

 今月の始まりから世間は賑やかで、新聞紙上に目を通すとあちこちに「衆議院議員選挙」の話題が踊っています。
 日常口にするお肉にも好感度の調査があったなら、やはり牛肉の支持率は1位でしょうか。次いで豚肉、鶏肉と続き仔羊、その他のジビエ類と続くのかもしれません。
 好感度調査では2位に甘んじてはいますが、もともと豚は人間の歴史の中でも最も古い家畜と言われています。それこそ新石器時代と呼ばれる紀元前6000年前には農耕の始まりと共に、土着の猪を飼いならしたのがそもそもの始まりだとか。日本でも弥生時代から豚を食用としていた。とあります。

 また、フランス、ドイツ、イタリア各のヨーロッパの国々において、豚は中世の時代より食生活の中心でありました。
 豚肉の脂身にはオレイン酸やステアリン酸など悪玉コレステロールを下げる効果のある脂肪が多く含まれビタミンB1の豊富さは他の食肉に比べても特に顕著です。糖質や脂質の代謝を円滑にし、脳細胞や神経細胞の働きを補助する。と、いうことは豚肉を食べると頭がよくなるのでしょうかね?
 古代ローマの博物学者プリニウスの言葉から引用すると「ほかの動物はたったひとつの味しか持たないのに、豚肉には50もの異なった風
味を一身に兼ね備えている。」パテや、ソーセージといわれるお肉の加工品を扱うお店を、フランスでは「シャルキュトリー」と呼ぶようにひとつの名称にもなっています。

 豚は秋から冬にかけてドングリなどの木の実を食して太って来ますので、古来は冬が来る前に豚をお肉にしていました。フレッシュな豚肉はクリスマスの日を前後とした時期にしか口に入りませんでした。もともとクリスマスにはお祝いに豚を食べていたのです。七面鳥を食べるようになったのはアメリカ大陸が発見された後のことです。

 すると、次の春から秋までは豚肉は塩蔵品で食いつないでいくという、慣習が生まれてきます。保存食品としての形態が様々に考案され、ベーコンや、ソーセージ、ハム、などが生まれてきました。

 ベーコン、ソーセージ、ハム、いずれも基本的には豚肉の加工から派生した食べものです。
 日本において豚肉を使った加工品が登場するのは江戸時代末期、長崎に住んでいた中国人がハムを作っていたという記述も残っています。
 その後の日本ではドイツ人から学んだ加工技術が主流を占めていたため、日本でソーセージやハムというとドイツ風に燻製したものが多く、それを基に発展、認識されてきました。
 塩をまぶしたモツや屑肉を豚の腸に詰めたものがソーセージです。
ソーセージの「ソー」はラテン語で「塩」のこと、「セージ」はハーブの一種セージの葉に由来します。

 背中の脂身の多い部分を塩漬けにしたものがラードでありベーコンでした。ベーコン(bacon)とは back(=背中)と同じ語源で体の部位を指す語だったのですが、現代ではわきばら肉の塩漬けや燻製加工した塊の肉を指してベーコンと言うようになりました。

 ハム(Hum)はフランス語でジャンボン、スペイン語でハモン。ハムというのも本来はベーコンと同じく「豚のモモ肉」の部位を指していう言葉です。ロースハム、ショルダーハムというのは日本で作られた単語のため英語圏ではあまり見かけない和製英語となっています。

 生ハムが「生」であるのは燻製していない肉という意味で区別してあるということです。豚のモモ肉を丸ごとハーブやスパイスを加えた塩に漬け込んで、脱水が進めばあとは風通しの良い場所で何年にも渡って熟成させます。神戸では六甲おろしが有名ですが、スイスとイタリアの国境のアルプス山脈、またフランスとスペインの国境に横たわるピレネー山脈の麓などで上質の生ハムが生産されるのもこの山肌を駆け下りてくる風が熟成を進めてくれるからです。
 お肉の熟成が進むと、タンパク質は豊富なアミノ酸に変化します。これが旨味となるのです。
 スペイン産のハモン・イベリコや、イタリア産のサン・ダニエーレ、フランス産のジャンボン・バイヨンヌなど特産品はこのそれぞれの地域の気候に負う所が大きいといえます。

 日本に入ってくる本数も希少です。ジャンティオジェに入荷されますと、せっかくですからお客様の目の前でスライスさせて頂くことも多いです。大胆ではありますが実物を目の前にしていただくと、蹄もそのまま残っている形状です。少々驚きの声も上がって切っている私はニヤニヤ。

 生ハムはそのプレゼンテーションもさることながら、フランスだけでなくヨーロッパの風を感じられる郷土色豊かな食材とも言えますね。
ペッパー

11月を迎えると、冬がもうそこに感じられてしまいます。年々温暖化の影響でしょうか、暖かい日が続く事も多いのですが、朝夕の寒暖の差が大きくなったりすると、体調を崩しそうになりますね。
 先月はこの食材コラム、1ヶ月お休みしてしまいました。実は、少々スタンプで、、、エッ?それはハンコのこと?スカンク?それはイタチ科の動物、夜行性
です。スランプ?それは不調なこと。じゃあ、スパイス?そうスパイスです。

 スパイスといえばフランス料理においてまず筆頭に挙げられるのがコショウ。もうほとんどの料理において用いられ「塩・コショウする。」と言われる程ポピ
ュラーです。西洋料理における味付けの、基本中のの基本が「塩・コショウ」です。

 塩という成分は生物の身体そのものを形成するためにも欠かせません。古代ローマなどでは兵士のお給金の代わりに塩が用いられていました。塩はフランス語で「セル」古代ラテン語でサーラなどと呼ばれていました。現代に残る「サラリーマン」のサラリーとは塩のこと。お給金を他からもらう人の総称がサラリーマンだったのです。

 さて、話が少々それてしまいましたが、もう一方の「コショウ」。
 他のスパイスよりも、もちろん歴史が古く、紀元前ローマ帝国発祥の折りには、
すでにエジプトから後にヨーロッパと呼ばれる地域へ輸入されていまいした。
 このコショウの普及が、現代にいたる西洋料理の肉食文化を支えてきたのだと
もいえます。 しかし、フランスはおろかヨーロッパにはコショウを含むスパイスは生えてはいません。そのため、古くスパイスはその価値は金銀などの貴金属と同じ価値があるといわれてきました。
 現代では非常に身近な食材のひとつですが、流通事情が悪かった昔のヨーロ
ッパでにおいて、スパイスは防腐効果の目的や肉などの臭み消しの要素が強かったのです。
 ヴァスコ・ダ・ガマやマゼラン、マルコ・ポーロやコロンブスが危険を省みず冒険に乗り出したのはこのスパイスを求めてと言う説もあります。また多くのヨ
ーロッパの戦争がスパイス生産地での利権争いであったことも歴史上明らかです。

 スパイスは現代ではヨーロッパだけでなく、世界各地に流通するようになりました。最も消費量の多いのはアメリカなのですが、次いでドイツ、日本と続きそ
の次にフランスが来るのだそうです。意外に日本の消費量は多いのですね。日本の食事がアメリカナイズされるに連れてこの傾向は強くなった模様です。

 コショウには、黒、白、緑の3種類があります。3種類と言ったのは製造の過程での変化による分類で、同じ1品種、おなじ一本の木から製造されます

 コショウはあまりその栽培の様子は知られていません。実はその成り方は葡萄とそっくりで、生えてくるツルを柱に巻き付けて育てます。夏に白い花が咲き終わると、これもまた葡萄のような房状に緑色の実が成ります。

 黒コショウは緑色の実が色づき始めた頃、摘みとって発酵天日干しします。皮は黒くなりますが、中身は白いままです。
 白コショウは緑色の実が熟すのを待って黒く熟してから摘み取り、水に漬けて軟らかくなった皮を取り除くといった方法で作られます。
 緑コショウはまだまだ白黒コショウに比べると日本で流通している量はぐっと少なくなります。緑コショウは未熟なままの状態の実を収穫し、塩漬けあるいは
フリーズドライにしたものが多いようです。

 白黒コショウの使い分けは、ずばりコショウを使うお肉の色で図れます。つまり、鶏肉や豚肉などの白身のお肉には白コショウを、牛肉、その他の赤身の強い
肉にはやはり黒コショウです。特にジビエの季節に出まわる「鹿肉」このお肉も非常に赤身の強い肉なのですが相性のよいソースが「ソース・ポワブラード」その名も「黒コショウソース」です。

 コショウが「ペッパー」なのはポピュラーなのですが、西洋諸国の言葉では「辛い食物」を指してペッパーと読んでいるようです。唐辛子もペッパー。ホットペッパーとは「辛い唐辛子」のこと、ピンクレディーの代表曲「ペッパー警
部」のペッパーもこの唐辛子を指しているのでしょう。
 ピーマンも唐辛子の一種ですのでその形状から、英語で「ベル・ペッパー」パプリカ、いわゆる赤ピーマンや黄ピーマンになると甘味が増してきますので、「スゥイート・ベル・ペッパー」と呼びます。ベルペッパーを粉にした物で辛口なのがカイエンヌペッパー、辛くないのがパプリカです。パプリカはハンガリーの発祥で、この「パプリカ」、実はは古くモンゴル帝国時代の名残を残す名前で「ペッパー」の語がモンゴル語訛りになったものが「パプリカ」だそうです。

 地球の温暖化の影響ノかどうかは分かりませんが、近年はヨーロッパなどでは冬の訪れが遅くなり、ジビエの解禁日以降も山野に木の実などが遅くまで残り、
ジビエの肥えた時期が長く続くように思います。日本のエゾジカなどにおいても同じくで、割と風味が豊かに乗っているように感じる事も多いのです。

 いよいよ、ジビエのシーズンもやってきました。コショウなどのスパイスが
その味を引き立ててくれる季節です。
クリスマス

今年も早いものでもう12月です。ホントに1年があっという間に過ぎていくようです。今年一年皆様ご愛顧ありがとうございました。

しかし、ジャンティオジェのスタッフ達にとっては今年を締めくくるにはまだ早いのです。そうです、年に一度のとびっきりの夜、12月といえばクリスマスが控えているのです。
 神戸ではルミナリエが開催されています。北野坂の並木にもイルミネーションが灯され、街そのものの雰囲気がロマンチックに変貌してきて、クリスマス気分も盛り上がろうかというもの。

12月25日がクリスマス。さて、クリスマスとはそもそも何の日だったのでしょう?
はい、正解!そのとおり!皆さんご存知のようにキリスト教におけるイエス=キリストが生まれた日とされ
ています。

 ところが、実はイエス=キリストが生まれた日というのは正確には12月25日ではなく、よく分かっていないというのが本当のところのようです。
 では、なぜ、キリスト教において12月25日がキリストの生まれた日とされたのかというと、「冬至」との関わりがありました。
 1年の内で最も太陽の出ている時間が短い日が冬至です。冬至の翌日からは今度は日に日に太陽の出ている時間は長くなり、そして春が訪れます。冬至とは太陽をすべての生命の源としていた古くからの宗教においては太陽が生まれ変わる為の日だったのです。
 いつのまにかキリストの生誕の日と融合されたというのが、本当のところではないでしょうか。

 さて、クリスマスに関する「へぇ〜」を少しノクリスマスに欠かせないのがサンタクロースとクリスマスツリーにまつわるお話です。

 いにしえの大司教聖ニコラウスは大変お金持ちで人々に施しをするのが常な人でした、ある時、村の貧しい父親がその貧しさから3人の娘を奴隷に売らなければならなくなった時のこと、そのことを知った聖ニコラウスは金貨の詰まった皮袋をもって当の家へ向いました。ところがその家は留守のようで、扉には鍵が掛けられています。仕方なく聖ニコラウスは煙突から皮袋をほおリ入れました。煙突から入った皮袋は干してあった靴下の中に見事飛び込み、以降この伝説が後々まで語り継がれたそうです。ちなみに「サンタクロース」とは「セント・ニコラウス」のオランダ語読みだそうで、日本に入ってきたのが江戸末期、通商のあったオランダが主だったことからも窺えます。

 さて、クリスマスツリーは以外と歴史は浅く、近代ドイツの教会で毎年のクリスマスに行なわれる、キリスト降臨のお芝居の舞台にその由来があるそうです。
 聖書にまつわるお話で最初に出てくるのが「アダムとイヴ」。聖書では禁断の実を食べたことになっていますが、何の木であったのか具体的には記載がありません。そのためお芝居の背景の大道具として使用されたのが、木そのものは冬でも緑の葉を付ける常緑樹のもみの木。禁断の実は、赤いリンゴの実が使用されま
した。緑色と赤色のクリスマスカラーはここから発祥しているといわれます。

 クリスマスの食べ物として真っ先に思い浮かぶのは「七面鳥」です。七面鳥はコロンブスが新大陸を発見してから以降にヨーロッパに入って来ました。アメリカ大陸を発見したコロンブス一行には七面鳥は非常に捕えやすい鳥と映りました。長い旅路で海を渡った彼らにとって、まさに神さまが与えてくれた恵みであ
り、神様に感謝して七面鳥を食すようになりました。

 ところが面白いことにコロンブスの出身のスペインにおいてはクリスマスの料理といえば、「豚」だそうです。スペインは過去の歴史でイスラム教やゲルマン民族など多くの民族が足を踏み入れた土地であるため文化は様々な物が混沌としているようです。
 クリスマスに豚を食する習慣は、ドイツからイギリスに嫁いだ王女の実家から毎年クリスマスのお祝いの贈り物として猪を贈ったのが始まりらしく、ヨーロッパが神聖ローマ帝国だった当時、ハプスブルグ家とスペイン・カスティージャ王国と婚姻関係を結んだ頃からスペインにもクリスマスには仔豚の丸焼きの料理が
見られるようになったのだとか。

 フランスでは「シャポン」と呼ばれる雄鶏が造られます。1羽4キロ程もあるちょっと大型の雄鶏なのですが、「造られます」というのは、シャポンは生まれた時からクリスマスに向けて肥えるように仕込まれるからです。シャポンは生まれてまもなく去勢され12月25日に食卓に登るように餌も調整されて与えられ
るのです。
 フランスではクリスマスには家族で食卓を囲むことが多いらしく、このサイズは家族でお祝いの食事を楽しむサイズであるといえます。一家の長であるお父さんが切り分けなどを披露するのでしょうか。

 また、南仏プロヴァンスには「伝説の13種類のデザート」なるお菓子をクリスマスには食します。13種類とはキリストの最後の晩餐にちなんだ数字ですが、内容は数々のドライフルーツやヌガーなど、これらをボンブとよばれるパンに似たお菓子と共に食べるのが古い伝統だそうです。

 では、日本では、、、街は華やかなイルミネーションで飾られ、1年の締めくくりを楽しい雰囲気でいっぱいに賑わいます。
 冬というシーズン、クリスマスの時期はフランス料理が最も得意とする料理の数々がとても美味しくなる季節でもあります。もちろんそんな「聖夜」に似あうのは、やはりフランス料理のテーブルではないでしょうか?

さてさて、ジャンティ・オジェも一年で一番忙しい日を迎えます。
年に一度のクリスマス、どうぞ皆様、華やかな夜をお楽しみ下さい。
カニとエビ

如月の候はもとより、常々私はJRを利用して通勤しているのですが、三ノ宮駅などに国内旅行のポスターなどが貼られているのをよく見かけます。冬といえば、美味しそうに真っ赤に茹であがった「蟹」の写真。
 寒い日にはご家庭で鍋をつついたりすることなどもありますね。年末年始にかけては、各ご家庭でも「カニ鍋」なども多く見られたのではないでしょうか。

 代表的な「蟹」といえば「タラバガニ」や「ズワイガニ」。高級品としても知られていますが、まさに冬の味覚といえます。

 「タラバ」とは漢字で書くと「鱈場」魚のタラがたくさん獲れる漁場のことで、タラの獲れるところに多くいることから「タラバガニ」の名がついたそうです。あまり聞きなれませんが、鱈の漁場でよく獲れる、「タラバエビ」なる種類もおります。

 さて、このタラバガニよく見ると、脚はハサミを入れて4対8本です。あれ?他の「カニ」の種類には脚が10本のモノがいますよね。(9本とかだったら、どっかでとれちゃってるんでしょうね)

・・・まさか!今話題の偽装建築!?

 実は「カニ」には脚が10本のものと、8本のモノがいます。その形状から両方とも「カニ」と呼ばれていますが、生き物の種としては少しかけ離れた種類でもあるのです。10本のモノは「カニ」科のもので、8本のモノは実はヤドカリの種類に含まれ、実は進化をずーっと辿っていくと、地上の蜘蛛と枝分かれして海に棲むようになったものなのだそうです。

 ズワイガニは5対10本の脚を持った「カニ」の種類で、獲れる地方によって「松葉ガニ」「越前ガニ」「間人(←たいざ、と読むんですって。知りませんでした。)ガニ」などと名前を変えて流通しています。

 これら海老、蟹類など外側に固い殻をもったモノが「甲殻類」です。お祝い事の席上など、おめでたいものとして「海老」が挙げられます。
 海で老いると書いて「海老」ですから、長寿を表すいわれがあり、また結婚披露宴のお食事などでも登場するのは、「夫婦お互い、共に腰が曲がるまで」の意味があるからなのです。

 日本で立派な海老と言えば「伊勢エビ」です。お隣の中国でも伊勢エビは龍の化身とされています。この伊勢エビ、ある地域では捕え方がユニークで、まず漁師さんが右手に長い柄の網を、そして左手に先端にタコをつけた棒を持って船の上から海の底へ向って網とタコを降ろします。
 底に伊勢エビがいると、タコはエビの天敵ですからエビは後ずさりします。この後ずさりしかできないという特性を利用して、エビの背後に構えた網にエビを追いやるのです。

 また、フランス料理で代表的な海老はやはり「オマール海老」です。ひと昔前までは「ロブスター」の名称のほうがポピュラーだったのですが、フランス料理が広く認知されるようになってからは「オマール」の名のほうが通りがよいかもしれません。日本語名は「海ザリガニ」あんまりカッコよさそうじゃ無いですね。

 それで、オマール海老に限らず、甲殻類によく取り合わせるソースが、「ソース・アメリケーヌ」。アメリケーヌの名は、フランスのとあるレストランにおいてアメリカ人の観光旅行客に即興で作ったからだとか、アルモリケーヌというフランスの古い地名にちなんだものだとか諸説あります。
 ジャンティオジェでも魚料理やオードヴルなどに度々お添えすることもある茶色いソースで、他所のフランス料理店でもよく作られています。
 このソース、実に深い味わいとエビの香りが溢れます。ソースの作り方は野菜と一緒にこれらの海老を殻ごと一緒に炒めて、充分にエキスを煮出します。海の風味たっぷりの旨味とコクは殻の部分から抽出されるのです。

 これなら簡単にご家庭でも作れそうですね。え?できませんか?

 それではどうぞどうぞジャンティオジェにて特上の「ソース・アメリケーヌ」をお作りして皆様をお待ちしております。季節は冬、カニもエビも大変美味しい季節です。
5つのC

ひと雨ごとになんだか暖かくなっていくような気がします。春が近づいて来ているのが、感じられますね。

 春といえば、学校でいうと卒業式や終業式、また、お勤めの方には一年の「締めくくり」としての年度末が規定されているところも多いのではないでしょうか。
 ジャンティオジェでも歓送迎会などでご利用の皆様が多く見られ、賑やかになります。新しい始まりのお祝いですね。

 さて、豊かな気持ちで進んだ料理における「締めくくり」として、フランス料理では古くから、

「食後の時間を豊かにする5つのC」

があると言われています。

 フランスにおけるレストランの文化のひとつなのですが、それぞれの単語の先頭の文字が「C」であることからこの様に言われるようになりました。

 ひとつめはカフェ(cafe)の「C」です。カフェは食後のお茶の代名詞でもちろん紅茶も含まれます。コーヒー、紅茶に含まれる成分、カフェインは脳を活性化させると言います。食事中はワインで料理を楽しみますので、デザートからはコーヒーや紅茶の出番です。

 ふたつめはショコラ(Chocolat)の「C」.ショコラとはご存知チョコレートのこと。チョコレートで言い表されていますが、お茶と共に楽しむ小菓子全般を表しています。ジャンティオジェでも食後にお茶とご一緒にご提供しておりますのが、ショコラやプティフール。「プティフール」とは、直訳すると「小さなかまど」と言う意味です。お料理をした後に余熱の残るかまど(オーブン)、夜のうちにそこで、小さなクッキーや焼き菓子の生地放り込んで焼いておき、翌日の午後のお茶の時間に食べると言うのが始まりだそうです。ショコラだけでなく、クッキー、マカロンなどなどを取り合わせてお召し上がりい
ただいております。

 続いて食後酒、コニャック(Cognac)の「C」です。日本人はもともとアルコールを分解する酵素が弱いと言われています。食後酒はまだまだ馴染みのない習慣かも知れませんね。食前酒としてシャンパンやシェリーを楽しむように、食後にはコニャックなどのちょっと強いお酒が飲まれます、食後酒は総称して「ディジェスティフ」です。主な種類はコニャックやアルマニャック、また、かす取りブランデーはフランスでは「マール」、イタリアでは「グラッパ」と呼ばれるお酒です。
 また、ポルト酒や貴腐ワインのような甘口ワインも好まれます。いづれにしても、食中に楽しんで頂いたワインなどよりも、濃くて深い味わいを感じさせるものが、食後酒の部類です。

 そして葉巻・シガー(Cigar)の「C」,ことシガーに関しては昨今の嫌煙ブームもあってこちらは更に馴染みのないアイテムですし、また、女性の方の多くにはほとんど縁がないとも言えるでしょう。
 ところが、この「葉巻」は1500年代に新大陸、いわゆるアメリカ大陸の発見と共にヨーロッパへもたらされたわけですが、当初より貴族やジェントルマンと呼ばれる人々の嗜好品でもありました。
 葉巻は紙煙草の様に肺まで吸いこんでニコチンの成分を体内に吸収するだけが目的では無く、そのふくよかな薫りを楽しむものでもあります。葉巻の薫りは大変強いので、正直に言うと吸える環境や周囲への配慮が必要なやっかいなものなのですが、このマナーを守ったうえでたしなむことが出来ることが「ジェントルマン」の証とされているのです。

 さて最後のひとつ、5つめは「会話・コンベルサシオン(Conversaccion)」の「C」です。
 テーブルのマナーと称されるもの。ナイフフォークの使い方に始まり、立居振るまいなどなどありますが、その「マナー」のひとつに、「みんなが食卓で楽しめる話題をひとつ何か用意していく」というものもあるのです。
 美味しい食事を終えたあとのひとときを最も豊かにしてくれるのは,友人たち、あるいは恋人どおしのおしゃべりの時間に他なりません。なにより、ついつい時間を忘れてお話に熱中されるのは、レストランという空間が快適であることで、私どもにとっても誇りであるのです。

 私はよくレストランをお芝居の「舞台」に例えます。主役はお客様であり、また最前列のオーディエンス(観客)のように。
 ちょっとした緊張感の中、幕が上がり、緻密に構成されたお料理の品々が登場します。メインディッシュはクライマックス。チーズ、デザートと興奮の波が押し寄せ、カーテンコールが響く中でじっくり余韻を楽しんで頂く。
 そんな想いでレストランを利用して頂くのもいかがでしょうか。

 どうぞこれからも「レストラン」という空間を充分にお楽しみ下さい。

ご予約はお電話でお願い致します。
TEL.078-231-2815


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